17歳とベルリンの壁が「Object」で見せた新しい挑戦
画像出典:http://17berlin.tumblr.com/
東京を拠点に活動し、国内シューゲイザーシーンの最前線を担う人気バンドとなっている4人組バンド「17歳とベルリンの壁」。
アンダーグラウンドの色味が強いシューゲイザーというジャンルにありながら、キャッチーなメロディと爽快感のあるサウンドで、あまりこういったシーンを聴かないよりライトな音楽ファンや若い世代からも注目を集めている存在です。
そんな17歳とベルリンの壁が、2018年8月8日、待望の3rd Mini Album「Object」をリリースしました。
個性を残しつつ、新しい風も取り込んでさらに進化した渾身の一作となっているこの「Object」ですが、作品としての評価はもちろん、「リリース当日に各種ストリーミングサービスで配信、さらにYouTubeで公式に全曲フル公開」という挑戦的な試みでも話題を集めています。
そんな17歳とベルリンの壁の最新作「Object」と、彼らの挑戦について紹介・解説します。
17歳とベルリンの壁「Object」
「17歳とベルリンの壁」は、シューゲイザーをベースにインディーポップ、ドリームポップなどの要素を取り込んだ音楽性で注目を集めるバンドです。
きらびやかなリードサウンド、奥行きたっぷりに厚く歪むギター、清涼感を感じさせる繊細な男女ツインボーカル、そして軽快なリズムワークが独特の浮遊感を生み出して、国内シューゲイザーシーンを支える最重要バンドのひとつとして注目を集めています。
これまでに1st Mini Album「Aspect」、2nd Mini Album「Reflect」などをリリースして、疾走感がありながらノスタルジックな感情をかき立てる正統派シューゲイザーの楽曲で多くのインディーズバンドファンを魅了してきました。
そんな彼らが満を持してリリースした3rd Mini Album「Object」は、それまでの作品とは少しテイストが変わり、サイケや洋楽ポップス、ダンスミュージックなどのエッセンスも含んだ意欲作となっています。
そんな中にもしっかりと17歳とベルリンの壁の個性は表れていて、これまでのファンも大満足できる名盤に仕上がっています。
「リリース日に全曲YouTubeで公開」というチャレンジ
そんな「Object」ですが、リリース当日となる2018年8月8日に、17歳とベルリンの壁の公式YouTubeチャンネルから全曲がフル公開されるという、驚きの試みがなされたことでも注目を集めています。
この大きな挑戦の背景には、Vo.Gt.鶴田氏による、現在の音楽シーンを取り巻く状況を踏まえた上での考えがあるそうです。その詳細は、「Object」の特設ページにて語られています。
「音楽作品の価値」の変化、と17歳とベルリンの壁の挑戦
17歳とベルリンの壁がこのようなチャレンジを敢行した背景には、現在の音楽シーンにおける「CDなどの音楽作品の価値・在り方」の大きな変化があるようです。
YouTubeなどの動画サービスやApple Music、Spotifyなどのストリーミングサービスの普及によって、音楽をCDという形で受け取る機会は大きく減りつつあります。
若い世代の音楽ファンは、「音楽を聴くのは専らインターネット経由」という方が大多数になっているのではないでしょうか。
また、これらのサービスの台頭で著作権に関わる聴き手の意識も変化し、「音楽作品はお金を出してCDを買わなければ聴けないもの」という考え自体が変わりつつあるのが現実です。
そんな中で17歳とベルリンの壁がとった選択は、「CDショップ店頭、ストリーミングサービス、YouTube等、自分たちの音楽に触れてもらう機会をできる限り増やす」「自分たちを金銭的にも応援してくれる気持ちがある人には、できれば『CDの購入』といったより収益性の高いかたちで作品を受け取ってほしいと呼びかける」というものでした。
これは、未だにCD売上に大きく頼っている日本の音楽シーンにおいて、相当に大胆な挑戦となっているのではないでしょうか。
今後も音楽シーンの収益モデルが大きく変化していく中で、今回の17歳とベルリンの壁のような挑戦をするアーティストは増えていくでしょう。
そして、「音楽を聴くこと自体なら、わざわざお金を払わなくてもできる」時代になって行く中で、アーティストが収入を得られるかどうかは、「そのアーティストを応援したいと思うファンがいるかどうか」という点に大きく左右されていきます。
ひとつの音楽作品として「Object」を受け取るのはもちろん、音楽の新たな時代を見据えた17歳とベルリンの壁のチャレンジにも注目してみてください。
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