チケット転売が100%正しい理由
先日、アーティストが連名で転売禁止の声明文を出すなど、コンサートやライブでのチケット転売行為を禁止にしていこうという流れが世の中にあります。音楽業界は、本当にそのアーティストのライブに行きたい人、好きな人だけが購入するべきだと言っています。。
しかし、プレミアがついた本や、レアな商品を安くで買って高く売り利益を出す”せどり”について誰かがここまで文句を言っているでしょうか。どうして音楽業界だけここまで過剰に嫌悪感を示しているのだろうか。今回はチケットの転売は本当に悪いことなのか考えていきます。
人気チケットが手に入るかどうかは”運頼み”
まず始めに、現在の販売方法から考えていきましょう。
某人気アイドルグループの場合、ファンクラブの会員が優先的に”抽選”に参加することができます。その抽選倍率は約60倍とも言われています。60人に1人しか購入権利を手に入れることができないのです。
年に数回しかライブはないのに、自分が行きたい公演で、1/60の確率を引き当てるというのはかなりの強運の持ち主ですよね。
そこで、少しでも当選確率を上げようと、複数名義でファンクラブに加入し、数口の抽選参加権利を手に入れようとする人も多いです。これに関しては複数枚購入する宝くじと似たようなものですね。ただし、前者は高額の年会費が必要ですが。
このように、人気のあるチケットを手に入れたいのであれば、運頼みをするしかないのです。
そして、そこに転売を生業とする”ダフ屋”は目を付けました。「それだけ倍率が高く、手に入りにくいなら、欲しい人はいくらでも金を出して買うはず」と。商売人なら極々当然、当たり前の発想です。事実、50~60倍の金額で売れています。
ダフ屋は購入権を確実に取得するために、ファンクラブに複数名義で加入し、抽選に参加しました。こちらもまた運頼みです。
結局のところ、ライブに行きたい人、ダフ屋ともに運に頼るしかありません。
つまり、通常、人気のチケットが手に入るかどうかは結局のところ運が良いという要素しかないのです。
需要に対し、供給が少なければ価格は上がる
需要と供給と価格。
中学生の社会の授業で需要と供給と価格の関係をグラフで示した図を見た事ある人がほとんどだと思います。
これらの関係を今回の事例で置き換えると、
- 需要=ライブに行きたい人
- 供給=発行されるチケットの枚数,会場のキャパ
- 価格=チケットの値段
となります。
例えばライブに行きたい人(需要)が10万人居るのに対して、発行されるチケットの枚数は1万枚、需要に対して、供給が大幅に少ないですね。それでも、定価で販売されていることがほとんどです。それは、”抽選”という運によって左右される誰でも平等に手に入る可能性をシステムに取り入れているからです。
このような場合であれば、価格は高騰するのが資本主義の市場では当たり前ですよね?
例えば、古本屋で希少な本を安く買って、別の本屋で高く売るいわゆる”せどり”ということをやっている人たちがいます。一時期話題になった”警備会社渡り鳥”という本がありますが、最高で価格が7桁まで高騰しました。
また、皆さんもお馴染みのiPhone。新モデルが発売されるたびに、大量に買ってオークションで販売する人がいます。オークションで通常の2倍ほどの値段が付きますが、それでも大量に入札が入ります。発売してすぐ欲しい!という人たちの需要があるからですね。それらの人たちはその価格を納得した上で買っています。
では、話をチケットに戻しましょう。
ライブに行きたい人が多いのに、販売枚数が少ない場合、オークションなどに出品されれば価格は高騰します。どれだけお金を出してでもライブに行きたいと思う人が大勢いるのであれば当然のことですよね。ある意味ではその公演に”プレミア”がついたと言えるでしょう。
しかし、世間的に大々的に非難されているのは、チケットの転売のみです。プレミア本を高く売ろうが、品薄のiPhoneを高く売ろうが、お咎め無し。一部の声が大きい人しか文句は言いません。
ここまで転売に過剰な嫌悪感を示す業界は音楽業界のみなんですね。それは何故なんでしょうか?
”イメージ”と”憧れ”を売っていることが関係がありそうです。
音楽業界はなぜここまで転売を嫌うのか
先日、音楽業界の4団体や、116組のアーティスト、24のイベントが連名で”チケット高額転売禁止”の声明を出しました。別に高額転売は違法ではないのに。
これに対して、アーティストのファンは「やっぱり◯◯は私たちのことを考えているんだ、かっこいい!」と思う人が多いようですが、これは明らかに市場経済を阻害する行為ではないしょうか?声明内の文章を引用しながら考えていきます。
チケットが本当に欲しいファンに行き渡らない
最初に説明したように、チケットの販売には抽選制が適用されています。転売行為自体を禁止したところで、運がない人はライブに行くことは出来ないのです。仮に転売行為が違法となったとしても、本当に欲しいファンは必ず手に入れることは出来ないのです。
その点、転売はお金さえ出せば必ず手に入る”救済措置”としての役割も果たしていると考えることができませんか?
高額で転売チケットを手に入れるしかないファンが経済的負担をうけている
高額でチケットを買う、買わないというのはそれぞれの自己判断、自己責任です。ファンは、誰かに買うことを強制されていますか?昔みたいに怖い先輩に脅されて高額なパー券を買わされているわけではないでしょう?好きで好きでどうしても行きたいから高額でも受け入れて買っているんじゃないですか。
それだったら、転売されて高額にならないように興行主はもっと広い会場を選択するという選択肢もあります。そこまでの需要があるなら、の話ですが。
ファンが経済的負担を受けていると責任転嫁して問題をごまかそうとしている音楽業界は少々傲慢なように感じます。
結局のところ見出しであえて”嫌う”と表現したように、正当な根拠はなく、感情論なんです。一部のファンは「抽選に漏れた人に高く売るとかふざけんな」「私が抽選に漏れたのに、転売されているものを買ってライブに行くなんてずるい」と言って売った人と購入した人を非難します。もちろん、最初から売るつもりで大量に買い占める行為は独占禁止法に抵触する違法行為ですが、正当な手段を使って手に入れたチケットを売ることまで非難できるだけの正当な根拠はないはずです。
プレミアが付いた本を安く買って、高くオークションに売った時、出版社は文句を言いますか?
発売したばかりのiPhoneを、オークションで2倍の値段で売った時、Appleはそれを禁止できますか?
現在の世界経済では資本主義が主流で、商売をするときは安くで買って高くで売ることが大原則です。高く買って安く売り、わざわざ自ら損する人は圧倒的少数派です。というか、ちょっとおかしな人です。
チケットの高額転売を否定している人は、プレミア本を、品薄のiPhoneを、希少価値の高い商品を、定価で売るのが当たり前だと言っているようなものです。かなり傲慢で横暴な論理です。
そしてアーティストは「私たちはファンのことをこんなに考えているんです!」「全てはファンのためなんです!」というファンからの好イメージを守るために今回の声明を出したのではないでしょうか。もっとも、ファンを扇動するために音楽業界のアイコンとして利用されているのかもしれませんが。
つまり、”イメージ”と”憧れ”を売る音楽業界だからこそ、このような正当な根拠がない感情論での一方的な否定がまかり通ってしまっている訳です。
現状の解決策
「転売は絶対禁止!」と資本主義の市場原理を無視した感情論で声高々に叫ぶ音楽業界ですが、ただ転売を禁止しただけでは「チケットが本当に欲しいファンに行き渡らない」という問題は何も解決しないのです。
対抗してあえて感情論で解決策を挙げるならば、何万人も入るもっともっと大きなキャパを持つ会場で、無料でライブをすればいいのです。”多くの人にもっと楽しんで欲しい”という感情を優先するのであれば、赤字になっても大丈夫でしょう。先行予約でチケットを手に入れるために、複数名義でファンクラブに入り、高額な年会費という経済的負担を受けているファンもいなくなります。
でもこんな解決策は絶対とらないですよね?利益を出さないと存続しませんから。
結局のところ、音楽業界は都合よく感情論と資本主義を使い分けてるだけです。
そこで、以下の2つの解決策を示します。
- 最低価格のみを決めてオークション
- 座席にランク分けを行い特典をつけ価格を上げる
最低価格のみを決めてオークション
現状、チケットの値段は席によって金額が多少前後しますが、ほぼ全員同じだけの金額を払って購入しています。平等を求めた結果、抽選という方式がとられ、本当に欲しいファンにチケットが行き渡らない状況です。
そこで、例えば最低価格5,000円、上限価格なしでオークションを行い、お金を多く払いさえすれば、確実に良い席に座れるという方式をとれば、本当に欲しいファンは必ずチケットを手に入れることができます。
本当にライブに行きたくて行きたくてしょうがないというという人はいくらでも出せるでしょう?
このようにすると、若年層の経済的負担が増えて音楽を楽しむ人がいなくなるという批判を受けそうですが、音楽はもともと娯楽です。
人生の豊かさは抜きにして、ライブに行かなくても、音楽を聞かなくても死ぬことはないですよね。例え「邦ロックは酸素」などと言っている人でも。
中世では、宮廷でコンサートを楽しめるのは貴族のみでした。平民は街中で大道芸人や吟遊詩人の音楽を聞いていました。
だからこそ、お金を多く払った人のみが見れるというのは、ある意味で平等に全ての人にチャンスが与えられているようなものなのです。
対価を払えないのに、前のほうのいい席に座ろうなんて虫のいい話じゃないですか?
座席にランク分けを行い特典をつけ価格を上げる
オークション形式とは違い、興行主が価格を決定でき、なおかつファンも喜ぶ方法です。
多くの場所で話題になっていますが、SEKAI NO OWARIのライブで、69,000円を支払うことで座れる”貴族席”という事例をご紹介します。
69,000円…一見すると高く感じますよね。しかし、最前列の特別な席でステージを見れる上に、”馬車で移動”や”専用控室”、”メンバーと直接会える”など、様々な特典が用意され、即売り切れるほどの人気っぷりでした。
また、ヴィジュアルジャパンサミットでは3日通し券が39,000円だったのに対して、1日VIP入場券が60,000円で販売されています。特典の内容はその日のライブを見る際に座ることができる特製ディレクターズチェアを持ち帰ることができ、3日間それぞれ違ったデザインのチェアが用意されているというものです。
3日間、VIP入場券を買えば180,000円です。大卒初任給くらいの高額なチケットですよね。しかし、即売り切れました。
これらの事例から学べることは、その席に見合う特典があれば、ユーザーはどれだけでもお金を出すということです。例え高額な経済的負担をファンに受けさせていたとしても。
このように、いくら高額でも特典も付いていて、確実にチケットが手に入る席を用意することで、本当にライブに行きたいファンが行きやすくなります。
また、興行主にとっても、アーティストにとっても、収益が増えるから嬉しいことだらけですね。この方法にしても、ファンは経済力に左右されます。
でも、本当に好きならバイトしてでも貯金してでも、いくらでも出せるでしょう。
転売に対して音楽業界の悪い対応
音楽業界は「ダメなもんはダメだから転売禁止」とただ単に感情論以外の正当な理由を言えずに、オークションで買ったファンに対して最悪の対応をすることもあります。
例えば、座席に「この席はオークションで購入したチケットなので無効」と書いて封鎖したり、転売サイトを通して購入した人を入場拒否にしたり、まるで犯罪者のように本人確認を厳重に行ったりなどを行っています。
明らかに営利目的で高額取引をして条例に違反しているダフ屋は捕まるべきです。
しかし、都合がつかずに行けなくて仕方なくチケットを売る人もいるだろうし、友達に譲ってもらう人もいるだろう。個人が正当に入手したものをどう使おうが勝手であるにも関わらず、席を塞がれたり、入場拒否するのはおかしい。
CDの売上が減り、ライブ産業がどんどん伸びている中で、こんなことをやっていっていたら結局自分で自分の首を締める結果が待っているように思う。そんなライブには積極的に行きたくはない。
ここまで転売禁止に対して反対という立場で論じてきましたが、条例に抵触するような犯罪的な行為を助長するわけではありません。むしろ、そのような人たちこそ市場をでたらめにしているので、捕まるべきだと思っています。
本記事においては、条例に抵触しない(法に触れない)個人的な転売について書いています。
正当な手段で手に入れたチケットをどうしようが主催者が口を出す余地は本来ならないはずです。
今回の転売禁止の共同声明のように、アーティストを利用し、感情論でファンに呼びかけて市場を阻害するようなことを続けていれば、せっかく伸びていたライブ産業も衰退の一途を辿るでしょう。
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