「轟音×詩」で描くボカロ哲学"Haniwa"
画像出典:https://youtu.be/MrHEmlFD5j0
独特すぎる表現方法で、ボーカロイド界でも唯一無二の存在として知られているボカロP、Haniwa。
その最大の特徴は、「VOICEROID(ボイスロイド)」と呼ばれる文章読み上げに特化した合成音声ソフトを用いて、「ポエトリーリーディング(詩朗読)」という形のボーカル表現をしていることでしょう。
難解で哲学的な歌詞がどこか無機質なVOICEROIDによって読み上げられ、そこにまるでピアノ線のように鋭いノイズサンドが重なることで、精神世界に意識を放り込まれたようなカオスな空間が生まれています。
そんな彼が見せる世界観を、まずはとにかく一度聴いてみて体感しましょう。
曲展開で魅せるHaniwaの代表曲”宗教に犯されているのではないか。”
2016年1月に公開された「宗教に犯されているのではないか。/結月ゆかり」は、ボカロP Haniwaの代表曲として知られている作品です。
野太く歪んだベース、平坦なギターリフ、打ち込みらしからぬ生々しいドラム、そこに重なる低体温なポエトリーリーディング。
そんなサウンドで描かれるテーマは、作曲という創作における「信念・意味・感情の必要性」です。
感動を歌うでも熱いメッセージを届けるでもなく、ボカロという無感情の機械音声を使って曲を作る。
そこに「そんなもの音楽じゃない」という批判をぶつける人間は、「音楽には感情やメッセージがなければならない」という宗教に犯されているのではないか。
そういった、冷たくあざ笑うようなシニカルなストーリーが淡々と描かれています。
あえて単調な展開を1分以上続けた後で「単調であって進歩もない。 平凡であって感動もない。 愚鈍であって魅力もない。それは命と同じなのに。」という言葉をぶつけてくるなど、実験的ながら真理を突いてくる歌詞にハッとさせられる一曲です。
幻想的なストーリーを描くボカロシューゲイザー”童話「暗い雨」”
『童話「暗い雨」/ 初音ミク,紲星あかり,結月ゆかり』は、淡々と思考を語るような曲が多いHaniwaとしては珍しく、ストーリー性のある歌詞が特徴の一曲です。
そこで描かれる「童話」はどこか不穏で不気味で、そんな中にも不思議とノスタルジックな雰囲気が感じられます。
ボカロの無機質で抑揚の薄いボーカルだからこそ、この独特の切なさが生み出されているのではないでしょうか。
それを支えるサウンドにも彼の個性が表れていて、轟音ギターの厚みと金切り声のようなリードフレーズが、いい意味でヒステリックな激情を描いています。
ボカロ好きのみならず、シューゲイザーなどのジャンルの音楽が好きな方なら、必聴の一曲です。
また、本人自作のCG表現によるMVも見どころとなっています。
Haniwaのテーマのひとつ”退廃”を描いた実験作”「VOCALOID」の脆弱性”
Haniwaがよく曲のテーマにしているもののひとつに、テクノロジーや文化などの「退廃」があります。
この『「VOCALOID」の脆弱性』はその代表的な作品のひとつで、タイトル通り、最近では「廃れた」と言われることもあるボカロ音楽の退廃について彼の哲学が描かれています。
ほぼインストとなっているこの曲で、初音ミクはひたすら「息を吸う」という、人間ではありえない、機械の合成音声にしかできない行動をしています。
その背景に徐々に厚みを増していく轟音サウンドが重なり、動画の画面にはVOCALOIDの定義と意義、未来について語る長文が映し出されます。
常に人間ボーカルと比べられて存在意義を問われるVOCALOIDの脆弱性、狭く流動的なシーンでしか通用しない儚い将来、そんな「ボカロ」という究極に自由で限定的な表現方法の魅力。
そんな、テクノロジー・文化としての「ボカロ」についてひとつの答えが提示されています。
映像と併せてひとつの作品に仕上がっている、実験的でインパクト大の一曲です。
Haniwaが描く轟音ポエトリーリーディングの世界・哲学の世界は、VOCALOIDというジャンルの枠を超えて、実験音楽のような雰囲気を帯びています。
その世界観は、「ボカロ音楽」というものについてステレオタイプなイメージしか持っていなかった方はもちろん、様々なジャンルの曲が存在するボカロ音楽をよく聴いている方も驚かせるものとなっています。
衝撃的な「轟音×ポエトリーリーディング」の世界に、一度は浸ってみてください。
関連するイベント・ミュージシャン