"さよならポエジー"の歌詞が描くメッセージ
画像出典:https://youtu.be/CjFEbf0F2EI
神戸発の3ピースロックバンド、さよならポエジー。
シンプルな王道のギターロックサウンド、そして内に秘めた感情をゆっくりと吐露していくような歌詞の世界観で、今全国的に話題を集めています。
2015年7月には大阪の名門インディーズレーベルthe ninth apolloに所属を果たし、一気に知名度を上げた彼ら。
テンポの速いアッパーなサウンドのバンドが多いthe ninth apolloですが、さよならポエジーはその中では異色とも言える、落ち着いたミディアムナンバーの曲が多いバンドです。
Vo.Gt.オサキアユの描く詞世界は、どこか文学的でミステリアスで、じっくりと腰を据えて読み解きたくなるような独特の空気感をもっています。
そこにストレートで骨太なサウンドが加わることで、その歌詞が描くストーリーやメッセージは、より確かな輪郭をもって聴き手に響いてきます。
今回はそんなさよならポエジーの魅力を、彼らの最大の特徴ともいえる歌詞に焦点をあてて紹介します。
詩的な歌詞で描くさよならポエジーなりの応援歌”前線に告ぐ”
「前線に告ぐ」は、2016年7月にリリースされたさよならポエジーの1stアルバム「前線に告ぐ」の表題曲です。
聴いていて一番に意識が行くのは、やっぱり何といってもその歌詞でしょう。
歌詞の中で描かれるのは、単調で何気ない、ごく普通の日々。
情景がまるで詩のような言葉づかいで表現されることで、曲全体が、まるで文学作品を読んでいるかのような独特の雰囲気に包まれます。
そのストーリーは、代り映えのしない日々の中で、過去の誰かを思い出すようなものとなっています。
そんな誰かに「あなたならきっと上手く生き残れるわ」と語りかける。
その言葉は応援と呼ぶにはあまりにも簡素で、それでいて心がスッと軽くなって安心感をもらえるような不思議な力強さがあります。
どこかそっけなくも温かい歌詞のストーリーが響くこの曲は、さよならポエジーなりの応援歌なのかもしれません。
独り言のような詞で「普通の人」を救う”二束三文”
こちらもさよならポエジーの1st mini album「前線に告ぐ」のリード曲となっている「二束三文」。
まるで独り言をつぶやくような静かな歌い出しが印象的なこの曲は、特別に優れているわけでも有名なわけでもない、その他大勢の「普通の人」にこそ響く一曲となっています。
「でもそれなりの才能で 俺は俺を救ってやろう」という言葉から始まる歌詞では、それなりに得意なこともあり、だからといってそれで全てが救われるわけでもなく、苦悩が多い割にはいいことがたくさんあるわけでもない、そんな普通の人生を生きる気持ちが描かれます。
曲の後半では「苦悩の割に実りのない そんな普通を愛している」という一文があり、「普通の人」として生きることの幸せをじんわりと感じさせて、聴く人に救いをくれます。さよならポエジーは誰かにそっと寄り添うような曲が魅力的です。
さよならポエジーのストーリーセンスが光る”二月の中を/February”
2018年5月にリリースされたさよならポエジーの最新アルバム「遅くなる帰還」のリード曲「二月の中を/February」。
二月という少し短くて肌寒い、独特の時間をタイトルに冠した一曲です。
そこで描かれるのは、主語・主体が省かれた、独特の言葉選びの抽象的なストーリーとなっています。
「離れすぎた距離感でいよう 朗報がそっと届くように」「抱え過ぎた幸せを売ろう 出来るだけずっと溢れぬように」といった、どこか孤独で、でも悲しそうではない情景の数々が連想されます。
そしてサビで歌われる「誰にも頷かなくていい」というメッセージには、芯の強さと穏やかさが併せて表れています。
決して強かったり激しかったりするわけではなく、それでも力強く背中を押すような救いの言葉が生み出されているのが、さよならポエジーの歌詞の大きな魅力ですね。
さよならポエジーの楽曲で綴られる歌詞は、聴き手の気持ちをぐいぐいと引っ張るのではなく、そっと背中に手を当てて一歩前へ踏み出させてくれるような、優しくて穏やかなメッセージ性を持っています。
日常に息苦しさを感じたり、人生に閉塞感を感じてしまったときは、彼らの曲を聴いてみてください。
心に引っかかっていた固い感情がスッと抜けるような、静かな救いを得られるのではないでしょうか。
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