「録って完成」じゃない!CD音源ができるまでの作業まとめ
音楽作品を聴く手段として一般的な「CD」。
皆さんも好きなアーティストのCDを買って、プレイヤーやパソコンで聴いているのではないでしょうか。
そんなCDに収録される音源を作るときには「レコーディング」をしますよね。
アーティストがSNSなどでスタジオの写真をアップして「レコーディング中です!」とお知らせしているのを見たことがある人も多いと思います。
ですが、実はCD音源の制作は「レコーディングで音を録って、それを収録すれば完成」というわけではないんです。
今回はそんな、レコーディング後もまだまだ続く、CD音源が完成するまでの作業を紹介していきます!
CD音源ができるまで
CD音源制作の始まり"レコーディング"
まず、CD音源を作る作業には、各パートが演奏して、それぞれの音を録音していく工程があります。
皆さんもよく聞く「レコーディング」ですね。
アーティストがマイクとポップガード(マイクの前に立ててある丸い網のようなもの)の前に立って歌っている写真を見たことがある人も多いと思いますが、あのような感じでドラムやベース、ギターなどの楽器もマイクを立てて音を録っていきます。
レコーディングスタジオは1日で安くても数万円のレンタル料がかかる上に、レコーディングには何日もかかるので、インディーズバンドでも相当な費用を必要とします。
ですが、最近はエレキ楽器をパソコンに直接ライン接続して信号をレコーディングし、その音を編集ソフトで加工して、まるで本物のアンプ(楽器用スピーカー)で鳴らしたような音を再現することもできます。
こういったソフトをうまく使えば、小さなレコーディングブースや自宅で安価に本格的なクオリティのレコーディング作業をすることも可能になっています。
最重要!"ミックス"作業
レコーディングが終わったら、次は「ミックス」や「ミキシング」と呼ばれる工程が待っています。
録音した各パートの音をひとつひとつ編集して、整えていく作業です。
音の帯域(〇〇Hz、〇〇kHz)などのバランスを調整したり、音量のばらつき「瞬間的に大きな音になったり、逆に音が小さすぎる部分があったり)を均一に整えたり、音の聴こえる向き(左右)や奥行き感を調節して、CD音源として聴きやすくしていきます。
録れた音をそのまま並べて再生するのは、料理で例えると、土から掘り起こした野菜や血抜きもしていない肉をそのままカレー鍋に放り込むようなものです。
皮を剥いたり食べやすく切ったり下処理をするのが必須なように、CD音源を作る上で、この「ミックス」という作業は絶対に必要な作業になっています。
プロのエンジニアが時間をかけて取り組み、アーティストとも「ここをもっとこうしてほしい」とコミュニケーションをとりながら進めていく、複雑で重要な工程です。
CD音源の音圧を調整"マスタリング"
ミックスが終了しても、CD音源は完成ではありません。
CDに収録する1曲1曲は、それぞれ音のテイストや、場合によっては使う楽器を変えながら録っていくので、そのままだと仕上がりにばらつきがあります。
そんな収録曲たちを、連続して再生しても違和感のないように最終的に整えていくのが「マスタリング」と呼ばれる工程です。
それぞれの曲の音量(音圧)が小さすぎたり大きすぎたりしないか、高音がキンキンと痛かったり逆に低音がモコモコと重かったりしないかを調整していきます。
完成した料理をそのままフライパンや鍋でお客さんに出さないのと同じように、CD音源も収録曲全体がきれいになるよう「盛りつけ」していくんですね。
マスタリングという盛りつけが終わることで、やっとCD音源は作品として完成します。
レコーディング作業を行わないCD制作も?
ここまで、「楽器による生演奏」という前提でCD音源の制作過程を紹介しましたが、実は最近は、楽器の音の「レコーディング」をしないCD制作も増えています。
ダンスミュージックなど、パソコン上で音色を打ち込んでいくような音楽は、作曲・編集ソフト内だけでサウンドの制作が終了して、ボーカルだけ小さなブースでマイクでレコーディングする…という流れで録音を終えてしまう場合もあります。
また、最近はギターやベース、ドラムや管楽器などの打ち込みソフトも発展しているので、そういった生楽器の音までパソコン上で入力してしまうこともあります。
大がかりなスタジオでレコーディングをするよりもそちらの方が安価なので、機材の進化とともにCD制作のやり方も変わりつつあるんですね。
以上、一般的に知られている「レコーディング」以降の工程も含めて、CD音源制作の流れを紹介しました。
あなたの手元にあるCDもそうやって作られて、あなたの知っているバンドやアーティストもこういった作業の果てに作品を完成させています。
どんなアーティストも経験している、ステージに立つ華やかな姿以外の地道で根気強い一面も知っていただけると幸いです。
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