Column コラム

音楽業界の現状~打開策はあるのか

かつてはレコードやテープ、CDを販売することによってアーティストやバンドは収益を上げていました。

それに対して現代では、インターネットの成熟により、実際に物を購入しなくても各種配信サービスから好きな曲を購入し、自由に聞くことができます。以前はアルバムの中に聞きたい好きな曲があったら、アルバムごと買う必要がありましたが、今は聞きたい曲だけをダウンロードすることもできます。

そして、CDが売れなくなり、音楽業界全体の売上は年々と落ちる一方です。

この現状を覆すような打開策はあるのでしょうか?検証していきます。

昔は”物”で音源を売るのが当たり前だった

これまでは、レコードやテープ、CDなどの”物”で音源を販売していました。そのため、音楽を聴くにはお金がかかるというのが一般的な常識として誰もが認識していましたよね。もちろん、音楽業界もその現状が当たり前だと思っていました。

音源が買えないけど、好きなアーティストがラジオ番組に出演するという情報があれば、カセットテープに録音して、テープが擦り切れるまで聞いたこともあるといいう人も多いでしょう。同じような経験をした人いませんか?今の20代前半が、カセットという録音可能な物体の存在を、かろうじて記憶に残しているギリギリの世代でしょうか。

また、ソニーが発売した、超小型で、カセットに録音可能、バッグに入り、ラジオも聴ける、という画期的なウォークマンという商品がありました。それを使って通学通勤途中にイヤホンで音楽を聴くことで、一種の優越感に浸れた時代もありました。

 

そして、テープに変わりCDが普及し始めてきたころから、レコードとCDが入り混じったレンタル店が出始めました。レンタル店も音楽業界の振興を促進した面もあります。

レンタル店が現れはじめたころから、現状としてレコードやCDの売り上げは減少の一途を辿ります。当たり前ですが、買うよりもレンタル料金の方が安いし、ダビングすればいいという考え方の人が増えてきたんですね。

時代が変わるにつれて、レコードショップはCDショップへと変わり、シングルCDのように、サイズはどんどん小さくなりました。

CDプレイヤーも出始めましたが、当初のシングルCDを聴くためには、専用のアダプターのような円盤型のものにはめ込んで聴く必要がありました。そういえば、あの時のシングルCDは、今はどうやって聴くのでしょうね(笑)

 

さらに、シングルCDと同じような大きさのMDという録音可能な媒体も出てきました。

MDが出てきたころの主流の家庭用録音再生機器と言えば、カセットも聴け、ラジオも聴け、CDも聴け、MDに録音も可能、テレビの音声ですらも受信できるマルチなものでした。人はどんどん現状を便利に便利にしようと思考を巡らせる生き物です。

このような状況の中、iPodなどのデジタルオーディオプレーヤーが登場し始めてから、音楽業界は更に変遷していきます。

インターネットの成熟、音楽は大量生産、大量消費の時代へ

“デジタルオーディオプレーヤーの登場≒社会の急速なIT化の進行”以降、今ではレコードも、CDも、MDも、趣味以外ではほとんど必要がなくなりました。CDはレンタルしてパソコンにデータとして取り込むための一時的な媒体と化していますよね。

また、音楽業界に音楽配信サービスが現れてからは、曲を直接インターネットからデバイスへと取り込むことができ、もはやCDを必要ともしません。デジタルオーディオプレーヤーの容量が加速度的に増えてからは、聞きもしない曲を何万曲も持ち歩くことができるようになりました。

さらにインターネットの通信速度が向上し、YouTube上で公式ミュージックビデオなどを通して、無料でいつでも音楽を楽しめる時代になりました。このような現状に慣れた人々には”音楽は無料で楽しめるもの”という概念が染み付いてしまっているのです。

例えば、職人が1つ1つ手作りで作る製品はコストも掛かって値段も高く、簡単には捨てずに大切に使いますよね。しかし、機械で大量生産された製品は傷んだり壊れたりしたらすぐに捨てます。

インターネットが普及し、データで簡単に音楽を聴ける現代では、以前のように音楽の”特別感””プレミア感”が薄れ、「大量生産、大量消費」時代だと言えるような状況ではないでしょうか。そして、楽曲の単価はどんどん下がっていって、音楽業界全体の売上も下がっていっています。

音楽業界にとってはインターネットの成熟はある意味では”猛毒”だったのかもしれません。しかし、毒も使いようによっては薬になる場合があります。

現にインターネットを上手く使ってメジャーへとのし上がった人たちも少なくありませんし、インディーズバンドもより多くの人たちへと自分たちの音楽を届けやすくなりました。その分、音楽も情報も世の中に氾濫しているのが現状です。

このような状況の中で、音楽業界が再興することはできるのでしょうか?

答えは先程述べた失われた”特別感”や”プレミア感”を感じることが出来る「体験」の中にあると考えます。

収益構造のシフト〜音源販売から体験へ〜

音源は売れないと散々叫ばれている一方でライブやフェスへの動員は増えています。ちょっと不思議だと思いません?だって音楽が嫌いだったらフェスには行きませんよね。

このことから考えると、どうも「音源を買わない人が増えた=音楽に興味のない人が増えた」ではなさそうですね。

現代のユーザーが求めているのは”体験”なんです。

そこで、音楽業界は、一度しか観れない「ライブ」に現状の打開策を見出しています。年々、凝った演出がよく見受けられるようになり、ライブやフェスにアトラクション的な要素が付加されるようになりました。

これまでのライブの位置づけは、CDを売るための広告宣伝的な役割でした。しかし、今は逆に、CD(音源、MV)がライブに人を集める宣伝的な役割になっており、チケット収入やグッズ販売などで、音楽業界は大きな収益を得ようとしています。

その現状の打開策をいち早く体現したのはアイドルなのかもしれません。

ご存知の通り、アイドルのCDは常にオリコンで上位になるような売れ行きを見せています。しかしその裏側で、音楽業界は「アイドルと握手したい、ライブイベントに参加したい」というファン心理を巧みに利用し、CDの中にシリアルナンバーを封入し、抽選にエントリーできるという方法がとられていたります。握手券やライブイベントへの参加券ほしさに、同じCDを何枚も購入する人がいるくらいです。

CDだけを販売していたら、毎回ミリオンヒットは絶対に無理ですよね。

フェスだって、何万人もの人が一箇所に集まって爆音で音楽を聞くという非日常感を求めて、多くの人が集っています。ライブも、みんなでステージの上のアーティストを見て、音楽を聴き、体を揺らしたり、手を上げたりする普段の生活と離れた体験を楽しむ人がたくさんいます。

現代のユーザーは音源よりも”体験”にはお金は惜しみません。

では、体験とはどのようなものが考えられるでしょうか。現状の打開策を考えてみます。

現状を打開するために体験型のコンテンツを増やそう

あくまでも今からの話は実現可能、不可能は考えずに音楽業界を盛り上げる1つのアイデアとして考えていただきたいです。

ユーザーが求めるのは、その時にしか味わえない空気感だったり、演出だったり、緊張感だったりといった一度きりの”体験”です。

例えば

  • 毎回お客さんの中から1人選んでステージにあげる
  • ゲストを呼んで、絶対に音源には収録されない曲を歌う
  • 当日までライブの会場はシークレット

など、パフォーマンス以外にも、行ってみたい!と思わせる要素が必要なのではないでしょうか。

また、体験型コンテンツとして、大人気バンドSEKAI NO OWARIのライブで、69,000円を支払うことで座れる”貴族席”という試みを一例としてご紹介します。

69,000円…一見すると高く感じますよね。しかし、最前列の特別な席でステージを見れる上に、”馬車で移動”や”専用控室”、”メンバーと直接会える”など、様々な特典が用意され、即売り切れるほどの人気っぷりでした。

このように、一度きりしかない体験を音楽と共に提供することが、今後の音楽業界・アーティスト、ひいてはユーザーにとって重要なことなのではないでしょうか。現状を壊す打開策です。

冷静に考えてみてください。ベートーヴェンやショパンなどの音楽家が活躍した時代に、録音で音楽を聞いている人はいましたか?100%居ませんよね。ではどのようにして音楽を聞いていたかというと、人々は劇場などに直接足を運んで演奏を聞いていました。特別なものだったんです。

ある意味、体験型にシフトしていくのは音楽の原点回帰なのではないでしょうか。


音楽業界は今が1番大変な時期なのかなと思います。ただ、それは悪いことではなく、現状を変えるために必要なことだと思っています。

目まぐるしく変わる時代や技術、価値観の変化でこれから先の未来で音楽がどのような位置づけになるかは分かりません。もしかしたら、タダで音楽を聞くのが当たり前、金なんて出さない!って価値観を持つ人が多数派になるかもしれません。

それでも、古代から人々が祭事の際に音楽を使ってきたように、どの時代の人々も生演奏を必ず必要とすると思うんです。願わくば、ミュージシャンが報われ、ユーザーは現状よりも生演奏を身近に感じるような社会になっていってほしいものです。

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